「まさにダンジョン!地下に広がる無限の世界 千仏鍾乳洞と牡鹿鍾乳洞②」 福岡県北九州市小倉南区
2017/06/18
その入り口は、怪物の牙の様にいくつもの尖った先端を下に向けている。まるで立ち入るものを拒むかのように。部分によって白かったり赤黒くくすんでいたりする岩肌の表面はザラつき、コケやつる草が絡んでいる。
牙の横、入り口脇からは地下水がさらさらと流れ出している。その清らかな感じが洞窟の雰囲気と対をなしている。
奥からのひんやりとした冷気が周囲に満ちている。そこには特別何の臭いも含まれていない。
君が立っているのはまさに冷気と外気の境目。その温度差は、この先が外とは違う世界なのだということを君に実感させる。
まぶしい太陽の光も中には届かない。がよく見ると、ぼんやりと先へ進む道が奥に浮かび上がっている。
中にはどんな世界が広がっているのか。無事に再びこの入り口まで戻ってくることが出来るのか。
全ては君の腕にかかっている。
準備はいいか?
さあ、一歩を踏み出したまえ!
(笑)コンピューターゲームがメジャーになる前の、ゲームブック風の書き出しにしてみました。歳がばれますね。
ちなみに鍾乳洞内はちゃんと各所各所に電灯が着いていますので、真っ暗で手探りなんてことにはなりませんからご安心を。
ただし、途中までね(ΦωΦ)
では入りましょう。
入り口をくぐったらこんな感じ。電灯がぼんやり。場所によって強さが変わるので、結構写真撮るのは大変です。
すごくドキドキです。
地下水の川。この川のせせらぎの音だけが常に聴こえています。
僕は本当に怪物に飲みこまれたのか…今にも蠕動しそうな、内臓内を進む。
広い所もあれば、リュックがガンガン引っかかる狭い場所もある。泥が着いたりはしないけど、カメラや携帯ぶつけるのは注意ですね。あと所々水滴が多く落ちてくる場所もあるので、防水処置が必要になるかも。
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天井がぐわっと広い場所に出た。まるで地下神殿のように荘厳な感じ。昔見たファンタジー映画では、こういうとこで悪の司祭がいけにえを捧げて儀式してたな。
ここは「奥の細道」と名付けられてます。下へと階段が続き、底には水が!
美しい。本当に美しい世界。
水はとても冷たいけれど、歩いていれば慣れてきます。澄み切ったその水の中を、じゃぶじゃぶと流れに逆らって歩いていく。
…これなんて読むんだろ。「はつねちち」かしら。「はつねにゅう」、「しょねにゅう」?
入り口から約900m。ここにこんな看板。”本日は”と書いてるけど、たぶんいつもここまでですね。実際にはもう少しだけ電灯ありますが、僕の前にいたカップルはここでUターン。
洞窟内で照明がなくなると書いたこの看板には結構力があります。やっぱ真っ暗は怖いですよね…
しかし!今回僕は強力ミニライト持参です!!看板にも負けず、行けるまで進んでみましょう。
…あっ!
行き止まり。いや、下の方がわずかに開いてる。「地獄トンネル」。お札の様に見えてるのは、入洞券の様子。
これ以上進むには水着がいる。下の幅はかなり狭く…
下からのぞいてみる。広く見えても、進むには下半身ずっと浸かりながら中腰もしくは四つん這いで可能、くらいか。
…ここまでやな。
もちろん水着など持って来てないし、こんなに冷たい水の中は、夏ならいいけど今は寒すぎる。
しばし立ち尽くす。まわりは誰もいなくて、聴こえるのは水の音だけ。水の音だけ…?
「この先に来れば、もっともっといいものを見せてあげるのにねぇ」
…どこからか、そんな声が聴こえたような気がした。
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妖しくささやく声は、帰りの僕の耳に甘くこだまし続けている気がした。
~③へ続く